第2話|白内障手術のレンズ選び|単焦点と多焦点、どちらがいい?「高いレンズ=良いレンズ」ではありません

「単焦点と多焦点、どちらがいいですか?」「高いレンズの方が、やっぱりよく見えるんですよね?」

白内障手術の説明で、よく聞かれる質問です。私は、眼鏡を使うことに困っていないのであれば、単焦点レンズで十分です。多焦点は“上位のレンズ”ではありません。

レンズ名を先に決めるのではなく、「手術後にどんな生活をしたいか」を先に考える。

単焦点には、単焦点の良さがあります

単焦点眼内レンズは、一つの距離を基本にピントを合わせるレンズです。遠くを重視すれば近くでは老眼鏡を使い、近くを重視すれば遠くでは眼鏡を使います。
必要な場面で眼鏡を使うことを不便に感じない方なら、それで十分に快適に生活できます。見え方の質を大切にしたい方には単焦点で良いですし、「多焦点にしなければ損」という考え方はしていません。

多焦点の価値は、「眼鏡を減らせること」です

多焦点やEDOFと呼ばれる眼内レンズは、裸眼で使いやすい距離の幅を広げ、眼鏡を使う頻度を減らすことを目指します。仕事や趣味で眼鏡をできるだけ使いたくない、老眼鏡の掛け外しがわずらわしい、という方には大きな価値があります。
ただし、「眼鏡を減らせる」と「どんなときも眼鏡がいらない」は違います。若いころの目に戻るわけではありません。

三焦点、EDOFなど、得意な距離が違います

多焦点系には、遠方・中間・近方を広くカバーすることを目指すレンズや、遠方から中間を連続的に使いやすくするEDOFなど、さまざまな設計があります。
近くまで眼鏡なしで見たい方と、夜間運転や遠方の自然な見え方を重視したい方では、候補が変わります。患者さんに覚えていただきたいのは分類名より、「自分はどの場面で眼鏡を減らしたいか」です。

ハロー・グレアや、くっきり感の違いがあります

多焦点では、夜のライトの周りに輪が見えるハロー、光がにじんで見えるグレア、コントラストの感じ方の違いなどが起こることがあります。レンズによって特徴は異なりますが、眼鏡を減らせる利点と一緒に考える必要があります。

夜の運転、仕事、趣味を聞く理由

夜間運転が仕事の中心にある方と、日中にスマホや読書をする時間が長い方では、優先する見え方が違います。「多少ハローがあっても日中の眼鏡を減らしたい」という方もいれば、「近くは眼鏡でいいので夜はできるだけ自然に見たい」という方もいます。どちらが正しいということではありません。

「高い=良い」ではなく、「自分に合うか」で決めます

白内障手術のレンズ選びで大切なのは、価格表ではなく、その人の一日です。朝起きて何を見るのか。仕事で何を見るのか。夜に運転するのか。スマホや本はどの距離で見るのか。眼鏡をどこまで減らしたいのか。

私はレンズを選んでほしいのではなく、手術のあとに過ごしたい毎日を選んでほしいと思っています。その毎日に近づくために、レンズがあります。

まとめ

単焦点と多焦点は、どちらが上という関係ではありません。眼鏡を使うことに困っていないのであれば、単焦点レンズで十分です。眼鏡をできるだけ減らしたい方には、多焦点が良い選択肢になることがあります。大切なのは、価格ではなく、目の状態と生活スタイル、望む見え方です。

自然な受診・相談案内

「多焦点にする」と決めてから受診する必要はありません。仕事、運転、趣味、スマホ、読書、眼鏡への考え方をそのままお話しください。そこから、ご自身に合うレンズを一緒に考えていきます。

佐藤智樹