SMILE Proが怖いと感じる方へ。手術前に私が話すこと。
- ブログ
- 2026.10.09
SMILE Proについて、話しておきたいこと|痛み、不安、そして「まれなこと」を伝える理由

「SMILE Proが気になる。でも、目の手術は怖い」
近視矯正手術のSMILE Proに興味はあっても、その一歩を踏み出せない方は多いと思います。痛そうだし、途中で動いてしまいそうだし、大切な目に何かあったらと思うと、怖くて当然です。
今回は、SMILE Proの手術で何をするのか、予定どおりに進まなかったらどう判断するのか、私が手術前にお伝えしていることをお話しします。
私は患者様から「痛くないですか?」と聞かれたとき、このように答えています。
手術が怖いと思うのはあたりまえの事だと思いますので、そういう時はひとつひとつ、どういった事が気になっているのかを、一緒に整理していくところから始めるようにしています。
SMILE Proの手術について
MILE Proでは、まず目薬で麻酔をして、目の周りを消毒し、まばたきを防ぐ器具でまぶたを開けます。そのあと装置を目に当てて、吸引で固定します。
私が説明するときは、「機械が近づいてきて、目にカパッとはまるような感じです」と言っています。ただ置くのではなく、ずれないように固定するわけです。麻酔で痛みは抑えますが、触られている感覚や圧迫感、まぶしさは残ることがあります(感じ方には個人差もあります)。ですから、手術中につらいことがあれば、我慢せずに声で教えてください。急に顔を動かすのではなく、言葉で知らせてもらえれば対応できます。「どこを見ればいいか」「次に何をするか」も、その都度声をかけます。じっとしていなければ…。という責任を、患者さん一人に背負わせるつもりはありません。
「10秒くらいです」だけでは、不安はなくならない
SMILE Proでは、近視治療のレンチクルを作るレーザー照射が、メーカー所定の条件で10秒以内とされています。ただ、その前後には準備や位置合わせ、組織を取り出す操作があります。手術全体が10秒で終わるという意味ではありません。
短い時間で照射できることは、私も評価しています。ただ患者さんが知りたいのは、何秒かかるかだけではないはずです。なので「すぐ終わりますから」で説明を済ませるようなことはしません。
その間に何が起こるのか。目を動かしてしまったらどうなるのか。予定どおりに進まなかったら、どうするのか。そこまで分かって初めて、手術を自分のこととして考えられるのだと思います。
もし途中で吸引が外れたら?
レーザー照射中は、目を吸引で固定しています。ただ、吸引が外れる「サクションロス」が起こる可能性はあります。外れたからといって、手術が失敗するとは限りません。一方で、その場で必ず続けられるとも言い切れません。レーザーがどこまで進んだのか。角膜にどのような切開ができているのか。まずはその状態を確認します。
再開できる場合もあれば、その日は中止して日を改める場合もあります。状況によっては、レーシックやPRK・LASEK系など、別の方法を検討することもあります。別の方法にも条件があるので、必要な評価と説明をしてから判断します。予定した術式で終えることよりも、その時点の目に合った判断を優先します。
SMILE Proを予定していたからといって、何があってもSMILE Proで終わらせなければならないわけではありません。中止することも、日を改めることも、安全を考えた判断の一つです。
「まれです」で終わらせず、数字を正しく伝える
「どれくらい起こるんですか?」と聞きたくなるのは、当然だと思います。
2025年に公表されたベトナムの単一施設のSMILE Pro研究では、約760眼のうち吸引解除は1眼、約0.13%でした。その1眼では、角膜から取り出すレンチクルの一部が残ったことも報告されています。
ただし、この数字は研究によって幅があります。別の916眼を対象にしたSMILE Proの研究では、吸引解除は0.66%と報告されています。
数字だけを見れば、少ないと感じるかもしれません。ただ、どちらも海外の限られた施設と期間の報告で、当院の実績ではありません。すべての合併症を合計した確率でもありません。「0.13%や0.66%だから、残りは一切問題がない」と読み替えることはできません。
また、従来のSMILEを調べた2017年の研究では、追加の屈折矯正が2年時点で2.9%と報告されています。こちらはSMILE Proではなく、従来のSMILEの成績です。
これらの数字は、調べた出来事も、手術の世代も、観察期間も違います。足したり直接比べたりして、「安全性」を一つの数字にまとめることはできません。数字を小さく見せたいわけではありません。どんな研究で、何を数えた数字なのかまで含めて、判断の材料にしてほしいと思っています。
リスクを話すのは、怖がらせたいからではない
SMILE Proにも、乾燥感、かすみ、光のにじみやまぶしさ、近視や乱視の残り、感染や炎症などが起こる可能性があります。角膜の形が不安定になる角膜拡張症のように、視力に影響する合併症も起こり得ます。
ここは分けて考える必要があります。手術直後の軽い乾燥感やかすみは、めずらしいことではありません。症状の重さも必要な対応も、合併症の種類によって違います。
追加の矯正を検討するときにも、度数が落ち着いているか、角膜に余裕があるかなどを改めて確認します。誰でも再手術ができるわけではなく、メガネなどで調整したほうがよい場合もあります。
こうした話を聞くと、かえって不安が増えることもあるでしょう。それでも、良い点だけを聞いて決めて、あとから「それは知らなかった」となってほしくはありません。数字が小さいからといって、説明を省いていいとは思いません。期待できることも、起こり得ることも、両方伝えるのが手術を提案する側の役割です。
手術が終わった後も、遠慮せずご相談を
手術当日は、ゴロゴロした感じや涙、かすみ、まぶしさなどが出ることがあります。目を休めて、処方された点眼を指示どおりに使い、決められた診察を受けてください。見え方が落ち着くまでの期間には個人差があります。
当日は予定を詰めず、ゆっくり過ごしていただければと思います。
そして、強い痛みや急な見えにくさ、増えてくる充血などがあれば、「次の診察まで待とう」と思わずに連絡してください。正常な経過なのか合併症なのか、患者さんが見分ける必要はありません。「何かいつもと違う」と感じたら、それで十分です。
怖いと感じることは手術を受ける資格がないという意味ではない

私はSMILE Proを、条件が合う方には良い選択肢だと考えています。それでも「絶対に何も起きません」とは言いません。
その代わりに、何を確認するのか、予定どおりに進まなかったらどう判断するのかまで、できるだけ具体的にお話しするようにしています。説明を聞いたうえで、それでも受けたいと考える方もいれば、今は受けないと決める方もいます。納得できないまま急いで決める必要はありません。「怖い」と感じることは、手術を受ける資格がないという意味ではありません。むしろ怖いからこそ、分からないことを一つずつ確認してから決めればいいのです。
その一言から相談してもらって構いません。
診察室は、怖さがなくなった人だけが来る場所ではありません。怖さや疑問を一緒に整理する場所でありたいと思っています。
上記バナーから佐藤眼科公式HP「SMILE Pro」診療案内へ移動します。
手術を受けると決めていない段階でも、ご相談ください。
- 参考資料
-
本文の医学的な説明は、以下の資料を参考にしています。院長の経験・診療方針と、研究や公的資料に基づく情報を区別して記載しています。
- PMDA|フェムトセカンドレーザ VISUMAX 600/800 添付文書 2024年10月 第1版。承認番号30600BZX00136000。使用目的、注意事項、不具合・有害事象。
- ZEISS Japan|VISUMAX 800 公式製品情報 近視治療のレンチクル作成時間、センタリング・眼球回旋の調整を支援する機能。10秒以内はメーカー所定の設定条件での値。
- Cung HS, Tran LHT, Tran TN. Three-Month Outcomes of SMILE Pro with the VISUMAX 800 for Myopic Astigmatism in a Large Population. Clin Ophthalmol. 2025;19:417–425. ベトナムの単施設・後ろ向き研究、術後3か月。吸引解除1眼(0.13%)とレンチクル残存を報告。抄録765眼/本文・表756眼という不一致があるため、本記事では「約760眼」と表記。
- Beckers D, et al. Intraoperative Safety and Postoperative Complications After SMILE Pro: A Retrospective Case Series of 916 Eyes. J Clin Med. 2026;15(12):4585. VISUMAX 800によるSMILE Pro 916眼の後ろ向き研究。完遂99.45%、吸引解除0.66%、追加治療1.54%。
- Liu YC, Rosman M, Mehta JS. Enhancement after Small-Incision Lenticule Extraction: Incidence, Risk Factors, and Outcomes. Ophthalmology. 2017;124(6):813–821. 従来SMILEの追加矯正を検討した研究。2年時点2.9%はSMILE Proの成績ではない。
- ZEISS|SMILE pro: Recovery 術後の回復には個人差があること、点眼・診察・活動再開についての患者向け説明。海外向け資料。実際の指示は担当医の案内を優先。
- 日本眼科学会|屈折矯正手術のガイドライン(第8版・2024年) 適応、術前検査、老眼に関する説明、術後の経過観察。SMILEの国内承認時期についても記載。
- 佐藤眼科グループ|SMILE Pro 公式診療案内 治療内容・手術料金・予約と相談の窓口。料金は2026年10月3日に確認。
佐藤智樹
