疾患と治療

眼鏡・ロービジョン

眼鏡について

私たちの目の屈折(近視・遠視・乱視)は年齢によって変化します。生まれたときは軽度の遠視ですが、成長と共に眼球が長くなって近視化していきます。H26年度の文科省の発表では、0.7未満の割合は、幼稚園生9%、小学生19%、中学生41%、高校生51%となっています。

また、40才を過ぎた頃からピントを合わせる力が落ちてきて、近くがぼやける、近くを見た後に遠くを見るとぼやけて見える、目が疲れやすいなどのいわゆる「老眼」の症状が出始める方もいらっしゃいます。症状が強くなってきたときは老眼鏡がよいでしょう。老眼は徐々に進行していきますので、目の症状にあった老眼鏡に作り替えていく必要があります。

このように視力というのは生まれてから一生涯、変化していきますので、その時その時にあった眼鏡を用いることで快適な生活を送ることが出来ます。

簡便で合併症もない眼鏡ですが、欠点もあります。眼鏡のフレームの煩わしさ、スポーツするときの不便さ、近視が強い方や乱視が強い方などは視力が出にくい、像が小さく見える、歪んで見えるなどがあります。 老眼がではじめた方で遠近両用眼鏡をかけられる場合も、遠くの像と近くの像の境目が歪んで見えたりしますので、使いこなすには少々訓練が必要です。

眼鏡の種類

単焦点レンズ 遠視や近視・乱視など、どの視力補正に対しても効果的なレンズです。度数は1つだけですが、それぞれの視野を広範囲でカバーしています。
多焦点レンズ 掛け替えすることなく1つの眼鏡で遠くと近くを見ることができるレンズです。多焦点レンズは一般的に“遠近両用”が主ですが、それ以外にも室内用の”中近”や“近近”の眼鏡もあります。

単焦点レンズ

遠用眼鏡
遠くがよく見える眼鏡で運転などに適しています。老眼が始まっている方では、この眼鏡をかけたままだと近くが見えにくくなります。
近用眼鏡
近くがよく見える眼鏡で、本や縫い物など近くを見るときに適しています。この眼鏡では遠くは見えません。老眼鏡とも言われます。

多焦点レンズ

遠近両用眼鏡

1つの眼鏡の中に遠く(上方)と近く(下方)がよく見える部分が入っており、掛け替えすることなく1つの眼鏡で遠くと近くを見ることができるレンズになっています。遠近両用を初めて使う方は、慣れて使いこなせるまでに時間がかかります。また長時間の読書などには近方専用の眼鏡が適しています。遠近両用眼鏡は“累進多焦点”と“二重焦点”の2種類に分けられます。

累進多焦点、二重焦点

累進多焦点
遠方近方の境目の線が入っていないため、見た目は遠近両用とは分かりません。 遠近だけではなく遠方から近方へ移行する部分に中間距離用の度数も入っています。しかし、中間部と近用部(下方)の見える範囲については、二重焦点レンズに比べてかなり狭く、慣れるまでに時間がかかります。
二重焦点
遠方近方の境目の線が入っているため、遠くと近くの使い分けがしやすいです。近用の部分が小玉としてレンズ下方に入っている以前からあるタイプです。累進多焦点と比べ、遠方から近方へ移行する部分に中間距離用はありませんが、近用部分の視野範囲は累進多焦点に比べて広いです。
中近両用眼鏡
中近両用眼鏡遠近両用に比べ、手元から2mくらいの中間距離までを広い視野でみることが可能な眼鏡です。新聞を見ながらTVを見る、あるいは仕事でパソコンをしながらすぐ近くの人と話すなど室内用のレンズになります。
近近両用眼鏡

近近両用眼鏡遠近両用・中近両用に比べ、手元から60cmくらいまでの範囲を広い視野でみることが可能な眼鏡です。手元の書類とパソコンの画面を交互に見るなど日常のデスクワークで一番必要な範囲をカバーし、ストレスのない視界が得られます。

近近両用眼鏡

特殊レンズ

プリズム眼鏡
斜視の方に用いる特殊な眼鏡です。眼鏡にプリズムを入れることで光を屈折させ、両方の眼で同じ視標が見えるようにする方法です。斜視自体が治るわけではありませんが、プリズムの使用により、両眼視を確保しやすい状況を作ります。また、斜視による複視(両眼でみると物が2つに見えてしまう状態)を軽減する事が出来ます。特に大人での眼筋麻痺などによる斜視では角度が小さくても複視の症状が強く、生活が不自由なことが多いですからプリズム治療が非常に効果的なことがあります。
遮光眼鏡
まぶしさの原因となる紫外線と青色光線をカットし、それ以外の光を出来るだけ多く通すよう作られたレンズです。まぶしさの原因となる光のみカットすることで、まぶしさで白くモヤがかかっているように見える状態を改善し、明るさを保ちつつ、物の輪郭をくっきりさせてコントラストを高めます。
≫ 詳しくはこちら
偏光眼鏡
魚釣りやスキーの時などの周囲から反射光によるギラツキをカットします。通常のサングラスは光の量を減らすだけですが、偏光レンズは反射光や有害な紫外線を選択的に軽減します。
調光眼鏡
紫外線の量によって色が変わるレンズです。紫外線の強い屋外などでは色が濃くなり、紫外線の弱い室内などでは薄くなります。1つの眼鏡を普段用とサングラス用に兼用可能ですが、色が濃くなる時に比べると、薄くなる時は時間がかかるので注意が必要です。

レンズのオプション加工

カラー 遠視や近視・乱視など、どの視力補正に対しても効果的なレンズです。度数は1つだけですが、それぞれの視野を広範囲でカバーしています。
マルチコート 反射防止コートをすることにより反射しなくなり、表から見た時もすっきり見えます。
防汚コート 汚れがつきにくく、ふき取りやすいためお手入れも簡単です。
耐擦傷コート すり傷に強く、耐久性に優れています。
紫外線(UV)カット 有害な紫外線をカットします。

レンズの素材と設計

レンズの素材は大きくプラスチックレンズとガラスレンズの2つに分けられます。 それぞれの長所と短所は以下の通りです。

  長所 短所
プラスチックレンズ 【長所】
軽い(ガラスレンズの約1/2の軽さ)
割れにくい
カラー染色が豊富
ふちなしやナイロール枠の対応が可能
【短所】
傷や熱に弱い
割れにくい
厚くなることがある
ガラスレンズ 【長所】
傷や熱に強い
透明度が高い(にじみが少ない)
耐久性に優れている
強度近視の場合、最高の薄さが可能
【短所】
重く割れやすい
染色・加工・フレームに制限がある
設計・種類が少ない

また、レンズの設計については、現在は非球面レンズが主流となっています。片面または両面を意図的に非球面で設計したレンズです。球面レンズより薄く仕上げることができるほか、像のゆがみを抑えることができ、掛けた時の見やすさ、軽さ、外観的な美しさなど総合的に評価しても優れたレンズです。

同じ度数での見え方の比較

当院の眼鏡処方

通常の眼鏡を作られる場合は、眼鏡店で直接作成されて全く構いません。眼鏡店で眼鏡を作成したが調子が悪い方、目の病気があるために視力がでにくい方、初めて眼鏡を作るため眼科で処方箋を書いてもらった方が安心という方、特殊レンズが必要な方、などが眼科での処方箋を希望される場合が多いようです。

通常の眼鏡店で作るのと違う点は、特殊な目薬を用いて本来の屈折はどのくらいか、両眼でものを見る力がどのくらいあるか、目を動かす筋肉のバランスはどうか、などを考慮の上眼鏡の処方を行うことです。冒頭で述べましたように、通常の眼鏡を作られる場合は、眼鏡店で直接作成されて全く構いません。

検査から処方までの流れ
まず、検査室にて眼の度数(遠視・近視・乱視)がどの程度あるかを詳しく調べます。
処方する眼鏡は使用目的(距離)によって度数が異なってきますので、検査員にご相談下さい。眼鏡の度数が決定すると装用練習を15分程度行い、その度数で疲れがないか、頭が痛くならないかなどを確認します。問題がなければ、診察にて医師が最終判断を行い、処方箋を会計時にお渡し致します。

当院では眼科隣に併設している店でも眼鏡を作成することができます。他の眼鏡店で購入をご希望の場合は、お渡しする処方箋をその眼鏡店へお持ち下さい。<

≫ 当院併設店、佐藤コンタクトで眼鏡作成ご希望の場合

成長期の眼鏡について (こどもの眼鏡)

就学時前の斜視弱視の患者さんを除けば、通常就学時検診のときに視力低下を指摘されて眼科を受診されるお子さんが多いようです。視力低下により日常生活に不自由を来しているお子さんは、基本的に調節麻痺の点眼を行い本当に近視かどうかの検査を行います。本当の近視であれば、日常生活に支障を来していれば眼鏡を勧めます。裸眼視力が0.5前後を目安に考えています。眼鏡は常にかける必要はなく、例えば授業中黒板の字が見えにくいとき、体育の授業中に遠くのお友達の顔が見えにくいとき、夕方や雨の日に見えにくいときなどに眼鏡をかけるとよいでしょう。

例えば授業中などに黒板の字が見えにくいと授業内容に集中できませんし、夕方や雨の日などは危険を伴います。特に女の子などは眼鏡に対して抵抗ある保護者の方も多いかも知れませんが、見えにくい状態を放置することで目の疲れが生じやすく、また何事にも集中力が欠ける場合もあります。見かけのことも大事ですが、お子さんとよく話し合って眼鏡をかけるかどうかを相談することが大事だと思います。

また、眼鏡の度数に関してはやや弱めがよいでしょう。バッチリ見える眼鏡を初めてかける場合、見えすぎて気分が悪くなるお子さんもいるので、かけやすい眼鏡をまず作り、慣れてきてもっと見えた方がよいようであればその時に同数を上げるとよいでしょう。メガネ作成の時は無料で度数を変えられる保証期間もあるので、保証期間内に再検することを勧めています。一般的には20才くらいまでは近視は進んでいきますので、数年に一度眼鏡の度数を変える必要がある場合が多いです。

また、保護者の中には、眼鏡をかけると近視が進むのでは、と考えられる方が多いようです。これは例えば、6才で1.0だった子供が8才で0.5となりメガネを作ったとします。10才になって視力が0.3になったら、眼鏡をかけたから視力が0.5から0.3に下がった、と考えてしまいメガネのせいだと思うのです。しかし、この子は近視が6才から進んできておりメガネをかけなかったとしても近視は進んでいく可能性が高いのです。

近視の度数が強すぎるメガネをかけたり、ゲームを長時間したりなどの生活を長くすることで本来の近視の進行をより強めてしまう可能性はあるので、強すぎない適切なメガネをかけることや、生活に注意しながら過ごすことも大切です。しかしながら、どんなに気をつけても成長に伴う近視の進行を防ぐことは不可能です。

中年期の眼鏡について(老眼)

40才を過ぎてくると近くが見えにくい、目が疲れる、長時間近くを見た後に遠くを見るとボーッとして見えにくい、という症状が現れることがあります。これはピント調節機能が老化と共に衰えていくために、近くを見るときに水晶体が厚くなりにくいのが原因ですし、近くを見た後に遠くを見たときにもピントが合わないのは水晶体が薄くなりにくいのが原因であります。あまり不自由を生じないときはそのまま様子を見て頂いてよいと思いますが、見えにくいので目が疲れてきたり、頭痛が出たり肩こりがひどくなってきたりという症状が出るようであれば老眼鏡を検討されるとよいと思います。また、老眼鏡を使い始めると老眼鏡なしでは近くが見えにくくなってしまうというのはよくある症状です。老眼鏡で楽に見ることになれてしますと老眼鏡なしではピント合わせが困難になってしまうためです。

では、眼鏡を作るときに老眼鏡だけがよいのか、かけっぱなしで遠くも近くも見える遠近両用レンズがよいのか、ということになります。眼鏡を使いこなすことが出来れば、かけっぱなしで遠くも近くも楽に見える遠近両用の眼鏡がよいと思いますが、うまく使いこなせない場合はものがゆがんで見えたり眼鏡をかけてもよく見えないということになるので単焦点レンズ(通常のレンズ)がよいでしょう。また、長時間本を読んだり、長時間運転をしたりという場合は、近く用や遠く用の単焦点レンズが楽に見ることが出来るのでこちらをお勧めしています。

また、遠近両用の眼鏡を作成する場合にはレンズ面が大きい方が楽に見えます。最近の若い方がかけている細長い眼鏡では、その細いレンズの中を遠く用と近く用を分けますのでそこの部分で見ないといけないので疲れや見えにくさの原因となります。 老眼鏡をかけ始めた後も年々眼の老化は進行していきますので、数年ごとに老眼鏡の度数は強めていかないといけない場合が多いです。

中高年の眼鏡について(白内障)

60才を越えてくるとほとんどピント調節機能が失われてきます。大体のかたは自分にあった眼鏡というのが決まってきています。通常のレンズで遠く用、近く用、中間用を持っていらっしゃる方もいれば、遠近両用レンズを使いこなしていらっしゃる方もいます。微調整をしながら様子を見て頂きますが、眼鏡をかけてもはっきり見えなくなってくる方もいらっしゃいます。

眼鏡をかけても見え方が悪くなってきた場合は眼科での精査をお勧めします。何かの病気が隠れている場合があるからです。最も多いのは白内障によりかすみが出てきたり視力が落ちてくる場合です。気にならない程度であればこのまま様子を見られて構いませんが、日常生活で不自由を来すようであれば白内障手術を検討するのも一つの方法です。

最近の白内障手術は、単に濁りを取り除くだけでなく近視や遠視、乱視を治すことが出来ます。特殊なレンズ(多焦点眼内レンズ)を使えば遠くから近くまで眼鏡なしである程度は見えるようになります。白内障手術はしないといけないものでは全くありませんが、生活の質が改善し喜ばれることも多いのも事実です。

ロービジョンについて

ロービジョンとは、病気やけがなどにより、眼鏡やコンタクトレンズを使用しても見え方に不自由が残る場合や、視野(見える範囲)が狭いことなどで日常生活が著しく不自由な状態をいいます。

WHO世界保健機構では矯正視力0.05~0.3をロービジョンと定義していますが、これ以外の視力でも、眩しさや見づらさなどの症状によってはケアの対象となることがあります。当院では対象となる患者さまに、生活に合った補助具の選定やアドバイスを行っています。

補助具の種類と特徴

老眼鏡を使っても手元の字が見えづらい方

拡大鏡(ルーペ)

見たいものを拡大して読み書きなどを行いやすくするものです。手持ち型・卓上型など用途の違いによりさまざまな種類があり、視力や視野に応じて適切な倍率やタイプが選べます。

拡大鏡(ルーペ)
拡大読書器

見たいものをビデオカメラの下に置くと、拡大された像がテレビ画面に映し出されます。拡大率を自由に変えることができ、眼鏡や拡大鏡では見えなかった方でも読み書きが可能になることもあります。据え置き型と携帯型のものがあります。

※拡大読書器は当院には無いため、ご希望があれば専門の業者から取り寄せし、当院でお試しすることができます。

拡大読書器

眩しさが気になり生活に支障がある方

遮光眼鏡
遮光眼鏡眩しさの原因となる特定の光(波長)を効果的にカットする特殊なレンズで、一般のサングラスとは異なります。眩しさを取り除き、ある程度の明るさを保ちつつ、物の輪郭をくっきりさせてコントラストを高めます。

※当院にある遮光メガネトライアルセットです。全部で19色揃っています。眩しさが楽になる色は個々により異なります。ご希望があればお試しできます。

その他の補助具

音声拡大読書機(よむべえ)
音声拡大読書機(よむべえ)印刷された文書を音声で読み上げる器械です。原稿台の上に目的の印刷物を乗せてスキャナーするだけで、その文章内容を音声で読み上げてくれます。新聞や小説なども可能です。
ポータブル紙幣読み取り機(QN-20)
ポータブル紙幣読み取り機(QN-20)紙幣の角を本機のカメラ部分に合わせてボタンを押すだけで紙幣を読み取り、紙幣の金種を音声・バイブレーション・ブザーの3種類でお知らせ。約110gの軽量でコンパクト、ポケットに入れて携帯出来ます。
音声拡大読書機(よむべえ)
音声色彩判別装置(カラリーノ)色彩を音声でお知らせ。150以上の色彩ニュアンスを識別。 手のひらサイズで持ち易い。買い物の際や、家でのコーディネートの際に大変役立ちます!70gと軽量なので、ポケットに入れても持ち運べます。また、明るい、暗いも音でお知らせしてくれます。

※この3つの器械は当院には無いため、ご希望があれば専門の業者(タイムズコーポレーション)から取り寄せし、当院でお試しすることができます。

補助具の種類と特徴

視覚障害の身体障害者手帳をお持ちの方は、拡大読書器や遮光眼鏡などの補助具の費用が、市区町村福祉事務所から給付される制度があります。等級により支給対象品が変わってきます。また、それぞれに支給基準額と耐用年数が設定されていますので、詳しくはお住まいの市区町村福祉事務所へご相談下さい。

視覚障害の身体障害者手帳の等級表は以下の通りです。

1級 両眼の視力(万国視力表で測ったものをいい、屈折異常のある者については、矯正視力について測ったものをいう。以下同じ。)の和が0.01以下のもの。
2級 (1)両眼の視力の和が0.02以上0.04以下のもの。
(2)両眼の視野がそれぞれ10°以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が95%以上のもの。
3級 (1)両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの。
(2)両眼の視野がそれぞれ10°以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が90%以上のもの。
4級 (1)両眼の視力の和が0.09以上0.12以下のもの。
(2)両眼の視野がそれぞれ10°以内のもの。
5級 (1)両眼の視力の和が0.13以上0.2以下のもの。
(2)両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの。
6級 (1)一眼の視力0.02以下他眼の視力が0.6以下のもので両眼の視力が0.2を超えるもの。