疾患と治療

コンタクトレンズ

コンタクトレンズをお考えの方へ

現在、我が国には1500万人を越えるコンタクトレンズ(CL)装用者がいると言われ、10人に1人がCLを装用していると推測されます。

目に直接レンズを入れるため、目から離れた距離にある眼鏡のレンズに比べ像のゆがみがなく、強度近視や乱視の方にも適しています。その一方で、CL障害も急増しており、インターネット販売によるCLの知識不足や、定期検査を受けない方が増えているのが原因として挙げられます。

コンタクトレンズをお考えの方へ

コンタクトレンズ(CL)は下記のように非常に優れた視力矯正手段です。CLをしたいと思う理由はいろいろあるでしょう。眼鏡では見えにくい、眼鏡が煩わしい、オシャレのためなど。適切に使いこなせば問題はないのですが、長時間使用したり、手入れが不十分であったり、適切に使用してもCLが合わない場合などに、合併症を引き起こすこともあります。なるべく合併症を起こさないためにも、眼鏡との併用を是非お勧めします。眼鏡と併走することで、CLの使用時間を減らせますし、充血や痛みを感じたときもすぐに眼鏡に切り替えることでCLの合併症が起きた場合も素早く対応することになります。眼鏡を持っていないとCLを使い続け合併症がひどくなってしまう危険性があります。

当院では未成年の方で眼鏡をお持ちでない方のCL処方は基本的に行いません。上記をご理解された上で、眼鏡をまず作成し、十分に眼鏡に慣れた状態でCLを使われることを強くお勧めします。同時に作ればよいのではないかという声もありますが、同時に作ってしまうとどうしてもCLの方が便利なので、朝起きてから夜寝る前までCLをし続けてしまう可能性が高いのです。眼鏡への抵抗を無くす意味でも、最低1ヶ月くらいは眼鏡での生活をお勧めします。

コンタクトレンズと眼鏡の比較

  長所 短所
コンタクトレンズ 【長所】
強度近視
遠視や乱視による像のゆがみや大きさの変化がない
視野が広い
スポーツに適している(ソフトコンタクトレンズ)
円錐角膜等の特殊な目にも対応可能
【短所】
合併症が起こることがある
取り扱いに注意し、定期検査が必要
眼鏡 【長所】
簡便
合併症がない
【短所】
円錐角膜等は視力が出にくい
フレームが視野を遮る
スポーツに向かない

通常のコンタクトレンズ(CL)に加え、技術の進歩により乱視用のソフトCLや、遠近両用CL、円錐角膜用や虹彩つきの特殊なCLも改良されてきました。
また、デザインの改良や素材の改良にともない、目に傷が付きにくくなったりずれにくくなったり、酸素透過性が向上するなどして、CL障害も従来のものに比べて起きにくくなってはきております。

しかしながら、コンタクトレンズ(CL)は直接目にレンズを入れるため、角膜に傷がついたり、結膜炎が起きたり、場合によっては細菌等が感染して重症化してしまうと失明したり後遺症が起きたりすることすらあります。適切にCLを使用し、定期検査を受けることで自分の目を守っていくことが重要です。

コンタクトレンズの種類

コンタクトレンズの素材は、大きく分けるとハードレンズとソフトレンズに分類されます。それぞれに特徴があるので、ライフスタイルに合ったコンタクトレンズを選びましょう。 両方を比較した利点・欠点は以下の通りです。

  長所 短所
ハードコンタクトレンズ 【長所】
強度近視、乱視などにも視力が出やすい
酸素透過性が高い
病気が起こったときに気付きやすい
長持ちする、経済的
【短所】
異物感があり、慣れるのに時間がかかる
ずれやすくスポーツには不向き
長期使用にて眼瞼下垂が起こることがある
ソフトコンタクトレンズ 【長所】
付け心地が良く慣れやすい
ずれにくいのでスポーツなども適切
【短所】
病気が起こったときに気づきにくい
強度近視、乱視の見え方がイマイチ

ハードコンタクトレンズ

利点
  • 硬い素材でしっかりしているので、光の屈折を正確に調整することができ乱視の矯正に優れています。また、強度の近視の方にも適しています。
  • レンズ径が角膜(黒目)より少し小さく、涙の交換もスムーズに行えるので、角膜へ十分な酸素が供給されます。
  • 角膜にキズがついたり異物が入った時は、ゴロゴロしたり痛みを感じるので、早期発見につながり重症化しにくいです。
  • 耐久性に優れ寿命が長いので、きちんとケアして長く使えば経済的です。寿命には個人差がありますが約1~3年です。
欠点
  • 硬い素材なので、はじめは異物感や痛みがあり慣れるまでに時間がかかる場合があります。
  • レンズ径が小さい為にずれやすく、外れることがあるので激しいスポーツには不向きです。
  • 角膜にキズがついたり異物が入った時は、ゴロゴロしたり痛みを感じるので、早期発見につながり重症化しにくいです。
  • 何十年も使用していると、まぶたが下がってくる(眼瞼下垂)ことがあります。

ソフトコンタクトレンズ

従来のソフトコンタクトレンズ(SCL)に加え、使い捨てレンズが主流となっています。1日使い捨てSCL、1、2週間頻回交換SCL、1~3ヶ月の定期交換SCLなどがあり、1日使い捨てタイプは洗浄・消毒が不要で毎日使い捨てなので、全てのコンタクトレンズの中で合併症の確率が一番低いコンタクトレンズとなっています。

利点
  • やわらかいレンズなので、つけ心地が良く慣れやすいです。
  • 角膜より少し大きいレンズで、瞳にフィットするためスポーツ時にも向いています。
  • 次世代素材「シリコーンハイドロゲル」を採用しているソフトコンタクトレンズは、従来のソフトコンタクトレンズよりも酸素透過性に優れているので、目の乾燥が気になる方にはお勧めです。
欠点
  • 目にキズがついてもやわらかいレンズのために痛みを自覚しにくく、誤った使用法によっては症状が悪化する場合があります。
  • やわらかいレンズなので、ハードに比べて乱視の矯正には劣ります。
  • 水分を含む特性上、たんぱく質など涙の成分や汚れが付着しやすいので、丁寧なお手入れが必要です。

特殊なコンタクトレンズ

近視・遠視を矯正する一般的なコンタクトだけでなく、乱視用や遠近両用などその方の症状に合わせたコンタクトもあります。以下の通りです。

乱視用コンタクトレンズ

乱視が強く、通常のソフトコンタクトレンズでは見づらい方に対して、乱視用のソフトコンタクトレンズがあります(使い捨てタイプもあります)。 ハードコンタクトレンズは、レンズの特性上、乱視がなくても乱視矯正の効果があります。しかし、とても乱視が強い場合は、乱視用ハードコンタクトレンズ(バックトーリック)が有効になる時もあります。

遠近両用コンタクトレンズ

遠近両用コンタクトレンズ遠近両用眼鏡のように、レンズの中に遠くを見る部分と近くを見る部分があるのが特徴です。ハードレンズとソフトレンズがあります。主に“同時視型”という図のような構成になっており、同心円状に交互に遠方用と近方用の度数が入っています。
「遠方に合わせた通常のコンタクトレンズでは手元が見づらいけれど、眼鏡はかけたくない、眼鏡をかけるのが困難」という方が対象となります。
「遠近両用までは必要ないけれど少しだけ手元を見るのが疲れる」という方に対してのコンタクトレンズもあります。

円錐角膜用コンタクトレンズ

円錐角膜用コンタクトレンズ円錐角膜とは、角膜が薄くなり前方へ円錐状に突出してくる進行性の疾患です。
明確な原因は分かっていません。乱視が強く、眼鏡矯正では視力が十分に出ません。

円錐角膜用コンタクトレンズ 初期であれば、ほとんどの場合が通常のハードコンタクトレンズでも矯正できますが、症状が進行するとレンズの装用が困難になってきます。

このような方に適しているのが円錐角膜用のコンタクトレンズです。その方の乱視の程度や症状に合わせたコンタクトを作成します。

虹彩付きコンタクトレンズ

虹彩付きコンタクトレンズ虹彩(黒目を囲んでいる茶目の部分)が欠損した方や、角膜疾患で白く濁ってしまった方に適応となります。人工的な虹彩付きのレンズを装用することで眩しさを軽減できる可能性があります。虹彩に加えて瞳孔付のものもあります。

コンタクトレンズ障害

コンタクトレンズケアの重要性

こんなことしていませんか?
  • コンタクトをつけたまま寝る
  • 交換期限の過ぎたレンズを使っている
  • 水道水でレンズを洗う
  • 装用時間が長すぎる
  • こすり洗いを怠っている
  • 保存液を継ぎ足して使っている
  • 汚れや化粧品の付いた手でレンズに触る

このような状態でコンタクトレンズを装用していると、症状がなくても以下のような重大な眼のトラブルを引き起こす可能性があります。

コンタクトレンズ眼障害アンケート調査の集計結果報告はこちら

目のトラブル

角膜上皮障害

角膜表面の障害の総称です。酸素不足や汚れたレンズを使い続けたり、レンズをつけたまま眠ってしまったりと原因は様々ですが、それによって角膜上皮がはがれたり、傷がついた状態です。放置すると細菌感染などで、だんだん角膜の奥に病状が進むことがあります。

細菌性角膜潰瘍

角膜への傷や、体の抵抗力が低下して病原微生物に感染しておこる角膜の病気です。間違ったコンタクトの使い方でも角膜の抵抗力が弱まり、角膜表面の傷から細菌感染を起こすことがあります。発見・治療が遅れると潰瘍が進行し失明したり後遺症が残ったりすることがある恐ろしい病気です。

40代女性 緑膿菌による角膜腫瘍
  • 細菌性角膜潰瘍
  • 細菌性角膜潰瘍
20代男性 コンタクトレンズ付けっぱなし
  • 細菌性角膜潰瘍
  • 細菌性角膜潰瘍

巨大乳頭性結膜炎

コンタクトレンズのアレルギー反応で上まぶたの裏が凸凹になる病気です。こうなるとコンタクトレンズの使用を中止して、ステロイド剤や免疫抑制剤の点眼を使用し治療を行いますが、重症例は数ヶ月かかることもあります。

  • 巨大乳頭性結膜炎
  • 巨大乳頭性結膜炎

アカントアメーバ角膜炎

コンタクトレンズに付着したアメーバが、傷ついた角膜に寄生して起こる角膜感染症です。感染したら治療がとても困難な病気で、発症した人のほとんどがコンタクトレンズ、特にソフトレンズ使用者であり、誤った使用法が原因である場合がほとんどです。

角膜内皮障害

角膜内皮とは黒目の中にある細胞で、一度障害を受けると二度と再生されません。コンタクトレンズを長時間装用すると目の表面がずっと覆われている事になるので、角膜に酸素(栄養)が届きにくくなり、角膜内皮が徐々に障害されていきます。

正常値は、成人で約2000~3000の細胞密度(cell/mm2)ですが、不適切な使用を続けていると徐々に数が減っていきます。減少して500位になってしまうと角膜が白く濁ってきて失明の可能性が出てきますので注意が必要です。

当院では年に1度くらい内皮細胞密度の測定を行っております。

  • 正常な角膜内皮
    正常な角膜内皮
  • 減少した角膜内皮
    減少した角膜内皮

合併症を防ぐには

重大なトラブルを防ぐためには

  • レンズの付け外しは必ず石鹸で手を洗ってから行ってください。手のひらや指についた化粧品はなかなか石鹸では落ちないため、女性の方はメイク前にレンズを装用してください。
  • レンズをつけたまま寝ないようにしましょう。
  • 1日の装用時間は長くても12時間程度とし、これを超えないようにしましょう。
  • 毎日きちんとケアを行いましょう(下記参照)。
  • 定期的な検査・診察を受けましょう。

レンズケアの仕方について

ハードコンタクトもソフトコンタクトも最近は、ボトル1本でケア(洗浄・すすぎ・消毒・保存)ができる用品でのお手入れが主流です。当院もこのケアでの説明を行っています。ケアの方法は以下の通りです。詳しくはケア用品の説明書をご覧ください。

洗浄
こすり洗い不要、書いてあっても、必ずこすり洗いをして下さい!こすり洗いをしなければ洗浄効果はありません。必ず専用の液で最低30秒はこすり洗いをして下さい。
すすぎ
こすり洗いをしたら、レンズの両側をよくすすいでください。
消毒と保存
レンズケースに専用の液を満たし、レンズが完全に浸るように入れ、しっかりとふたをします。ケア用品ごとに決められた時間放置すると消毒は完了です。
  • ソフトコンタクトの方は絶対に水道水は使用しないでください。専用の液を使用ください。
  • 使用後のレンズケースの液は毎日交換しましょう。
  • 日中、ケースを使用しない間は、清潔なタオルの上などに伏せて自然乾燥させてください。
  • 清潔にお使いいただくために、レンズケースも定期的(約3カ月)に交換してください。

コンタクトレンズは高度管理医療機器であり、使用の際は必ず眼科医の検査・処方を受けることになっています。大切な眼を健康に保つためにも、定期的な検査と診察を受け、眼科医の指示を守って正しい取り扱いを心がけましょう。

処方までの流れ

初めてコンタクトを作られる方、定期検査を受けられる方は、まず眼科受付へお越し下さい。完全予約制のため診察時間の確認を行います。診察予約後、ご希望のコンタクトレンズの種類を決めて頂きます。

当院には眼科の隣に併設のコンタクト店を設けています。視力検査の前にコンタクト店にてご希望のレンズの種類を決めて頂きます。その後、眼科で視力検査を行い、コンタクトレンズを装用し度数調整を行います。コンタクトレンズを装用したまま診察室にて眼とレンズのカーブが合っているか眼の異常がないかなど医師が状態をチェックします。問題なければコンタクトレンズ処方となります。

初めてコンタクトを使用される方は、レンズの付けかた・外しかたをスタッフが分かりやすく丁寧に指導いたします。
併設のコンタクト店にて安心してご購入いただけるように、ほぼ全てのレンズが購入前に1~2週間(種類によって異なります)、無料でお試しが可能です。見え方はもちろん、つけ心地も確認・納得していただいた後に購入という流れになっています。

  • ※全く初めてコンタクトレンズを使用される方は、お試し期間後1,2週間後に再度診察があります。
  • ※コンタクトレンズ処方箋のみの発行も可能です。